ダニエル・ブライアンが引退。プロレスがショーだから、感動できる。

 米国のプロレス団体WWEで活躍しているダニエル・ブライアン(34)が8日、自身のツイッターで現役引退を表明した。医療的な理由によるものとしており、同日に放送される同団体の放送で詳細を明らかにするという。

 キャリアの初期は本名のブライアン・ダニエルソンでマットに上がっていたこともあるブライアン。この頃に新日本プロレスプロレスリング・ノアといった日本のマットも経験している。WWEとは2009年に契約。以後、ヘビー級王座からタッグ王座まで同団体の現存するタイトルをすべて獲得するなど、スターレスラーとしての地位を確立したが、首の手術で王座を返上することもあった。

 ここ数年は故障との戦いで、昨年の1月にはインターコンチネンタルヘビー級(IC)王座を奪取するも、脳振とうの影響でその後の試合はキャンセル。5月に同王座を返上し、それ以来、長期の活動停止を余儀なくされていた。

 

WWE、ダニエル・ブライアンが引退表明 ここ数年は故障との戦い ― スポニチ Sponichi Annex 格闘技

 

WWEのダニエル・ブライアンが引退を発表しました。

プロレスの引退は休業である。というのが持論ですが、

今回のブライアンはもう二度とリングで戦うことはないのでしょう。

もう1年以上試合を行っていませんし、同じく脳震盪のクリスチャンも、引退試合をすることなく、実質引退状態にあります。

 

私がWWEを見始めた後にデビューして、スーパースターになって引退したのは、ダニエル・ブライアンが初めてだと思います。

WWEにおける彼の最初から最後まで見られたことに幸せを感じながら、かつてない虚無感がいっぱいです。

 

先にも書きましたが、プロレスラーの引退は休業であり、廃業が本当の引退である。と言われますが、日本的に言うなれば今回のブライアンは廃業でしょう。

 

6年です。たった6年の在籍期間でしたが、彼の功績は大きすぎました。ですから、引退のマイクアピール。ヒールベビー関係なくロースターの選手がブライアンの功績をたたえました。

ジョン・シナはここ10年近く、WWEの中心にいました。シナとオートン、シナとCMパンク、シナとオーソリティーといったように彼が主人公でした。一部のファンはそれに反発しブーイングを送りましたが、ジョン・シナは「Let's go Cena. Cena sucks.」をも取り込んだキャラクターへと変貌していきました。

ハルク・ホーガン的なアメリカンプロレス100%のトップレスラーが、WWEの主人公でした。

そこに現れた、ダニエル・ブライアン。インディー出身の技巧派レスラーです。このようなタイプのレスラーはWWEでは試合は上手いが地味ということで、トップに躍り出ることはありませんでした。

しかしダニエル・ブライアンは「ヤギ顔」「YESムーブメント」「チーム・ヘルノー」といった、お笑いキャラクターも演じ、いつしかファンの支持を集め、今回の引退でのファン、レスラーから最大の賞賛を得ています。

 

今度WWEに移籍する中邑真輔は「ダニエル・ブライアンと戦いたい」とインタビューで語っています。2人は新日本プロレスLA道場出身で、同じアパートに住んでいたという仲。今回の引退でダニエル・ブライアンと中邑真輔WWEで戦うという図式は見れなくなったことが、かなり惜しいです。

 

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ヒールベビー関係なく、ダニエル・ブライアンへ最大級の敬意を払っています。

こういうシーンを見ると「ショーであるプロレスの闘い」というフックが、寂しさを倍増させます。

彼らは憎しみ合っているように見えて、実は仲間であり、同僚であり、家族なんだと。

新日本プロレスの壮行試合で中邑真輔は、CHAOSのメンバーに囲まれて涙を流していましたが、あれ以上にバックステージは愛と感謝が溢れかえっていたはずです。

ビンス・マクマホン、HHH、ステファニー・マクマホン以下全レスラー。

大きな抗争を行った相手もいますが、あの瞬間は仲間なんだと。

 

プロレスは幻想を見ていますが、その幻想はあまりにもはっきりしすぎていて、それこそが人間の生の姿なのではないかと思うことが多々あります。

キャラクターを演じ、ストーリーに沿っているが、生き様が見えてくる。そこにプロレスがプロレスたる所以があると思います。

 

プロレスが、人間の正直な感情のぶつかり合いだとして、ブライアンを称えるのは彼と近かった人間の場合と、今回の場合だったら、どちらが感動的でしょうか?

 

レスラーは命を削り、ファンに何かを伝えようとしています。

その結果命を落としかねない怪我をしながらも、彼らはいつだって戦士であり続けます。

これは悲しい出来事ではありますが、プロレスの陰と陽があるとすれば、これは陽の出来事ではないかと思います。

この無力感とほぼ同じだけの大きさの感動と感謝が、ダニエル・ブライアンが我々に見せてくれた生き様の結果なのだと思います。