「内藤哲也の時代」とともにやってくる「新日本プロレスが提示したプロレス文法」

 

 

春の両国 INVASION ATTACKもすっかり定着し、

外敵襲来の意味は「他団体との連携興行」から変化していっています。

いわゆる新日本プロレス外の敵ではなく、本隊とそれ以外の関係性や、

ユニット間抗争

 

ロスインゴベルナブレス デハポンがデハポンを付けだしてから、

内藤哲也は急速に他のレスラーを批判しました。

それも感情的ではなく淡々と。

「キャプテンクワナ」からでしょうか、そしてそのキャプテンが「CHAOS入り」すれば「CHAOSと木谷オーナー」に噛み付いていきました。

CHAOSは本来ヒールでしたが、BULLET CLUB、鈴木軍の出現によって、

ベビーではないが、ヒールでもないという曖昧な位置に変化していきました。

その点ロスインゴベルナブレスは「CHAOSでもBULLET CLUBでもない。ましてや本隊でもない ロスインゴベルナブレス」

これは本隊離脱を宣言する言葉でありながら

「ヒールでもベビーでも曖昧なアンチヒーローでもない」というメキシコのロスインゴベルナブレスの哲学に近かったのかもしれません。

 

先のチャンピオンシップ並びにそこまでは、アンチヒーロー(CHAOS)に対するアンチヒーローでした。

ですから、BUSHIもEVILも乱入しましたし、SANADAという保険まで用意していました。

レフェリーを暴行し、IWGPを投げ捨てても、観客は内藤哲也を、ロスインゴベルナブレスを支持しました。

 

これまでの内藤哲也の発言をざっくり振り返ると

「リマッチへの批判」

「ファン投票批判」

タッグリーグに1.4でシングルマッチが決まっている奴が出るから消化試合になる。タッグリーグを取ったとしても1.4では挑戦しない。 」

新日本プロレスを出て行く奴らを快く送り出すのは、他団体(WWE)に勝てないってことを言っていると同じ」

「オカダ2億円プロジェクト」

「NJCは4月両国の挑戦者決定トーナメント」

「優勝したら大阪城ホールで挑戦する権利を要求」

「オカダ、並びにCHAOSは木谷オーナーのお気に入り」

「紙テープのタイミングは木谷オーナーの妨害工作

 

タッグリーグとNJCへの批判はほぼおなじ意味合いを持っていて

「まるで素晴らしい特権を得るように言ってるけど、それって自由じゃなくね?」ということです。

そして全て少なからず一定のファンなら疑問に思っているところを付いていることです。

WWEに勝つんじゃないの?1.4の直前のビッグマッチがタッグ?オカダってヒールでしょ?NJCとG1を同じ位置に置いてるけど?

 

非常に挑発的で、小馬鹿にしたような物言いなのは確かですが、決して理論は崩壊していない。

そして感情的に「バカヤロー」とか「このやろー」とか「コラ」とか言わない。

カブロンはバカヤローって意味ですが、内藤は感情をあまり込めません。

 

プロレスの文法に「挑戦を表明し、チャンピオンがそれを受ける。」というものがあります。

日本は特にその意味合いが強いのですが、挑戦を表明し、チャンピオンがそれをスカしたとしても、因縁が生まれたとしてチャンピオンシップが組まれることが多いです。特にここ最近。

となれば、NJCもG1も意味がなさない。

トーナメントやリーグ戦で体力を消耗し、ボロボロに成って挑戦するのではなく、

直接、リングに上って言ってしまった方が、リスクは低いのです。

 

この結果は新日本プロレスがプロレスの文法に頼りすぎてしまった結果でもあります。しかも毎回ほぼ同じ手法で。

 

10年代の新日本プロレスは、そういった「プロレスの文法」を新しい客層に見せることを重要視していました。

闘魂三銃士までは、そんなことをしなくても観客は皆知っていました。そして第三世代の時代に観客が離れ、棚橋は観客を引き戻したのではなく、新たな観客を連れて来ました。

その大半のプロレスの文法を知らない観客たちにこの5年間を費やしたのではないでしょうか。

 

絶対的ベビー、デビットのヒールター。GBHのベビーターン。

CHAOSというベビーとヒールの混沌。BULLET CLUBという外国人レスラーの脅威。

日々起きる裏切りと対局する友情。小島聡柴田勝頼という出戻り。世代闘争。

 桜庭和志・鈴木軍の来襲。そして退団という別れ。

 

新日本プロレス10年代の「プロレスの文法」をレクチャーする期間は5年で修了したのではないでしょうか。

そこに2016年という10年代後半が始まった年に

プロレスの文法を批判し、無視をしながらも、結果的にそれを上手く使うロスインゴベルナブレスという存在は。

プロレスの文法を修了した生徒たちが学ぶ、プロレスの応用ではないかと思います。

 

ぎょっとする方もいるでしょう。

しかしここからがまた一段と一味違う面白さがプロレスにはあります。

文法を学んだのならば、応用しましょう。

その先にはプロレス以外にプロレスを応用する。が待っています。